
この記事では、自律神経の乱れと、長く続く頭痛や肩こりの関係をお伝えします。結論は、緊張する側の神経(交感神経)が出たままになっていることです。すると筋肉の長さを感じるセンサーが乱れ、筋肉が張ったままになります。血管も細くなり、巡りが落ちます。もんでも戻るのは、上から降りてくる指令が変わっていないからです。
「肩こりと頭痛が、もう何年も続いている」
「マッサージに行くとその日は軽いのに、数日でまた元どおりになる」
「緊張する場面のあとは、決まって首がガチガチに張る」
そんなお悩みがある時には、このブログがお役に立てると考えています。
結論からお伝えします。張りのもとは、筋肉そのものではなく、脳から降りてくる指令のほうにあります。
こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています院長の作尾大介です。
「もんでもらっても、すぐに戻ってしまうんです」。臨床で、とてもよく聞く言葉です。戻ってしまうのは、あなたの体が弱いからでも、気持ちの持ちようのせいでもありません。今日は、その仕組みをお話しします。
交感神経は、筋肉にどう関わっているのでしょうか?

自律神経は、心臓や胃腸、血管の働きを自動で調整している神経です。
じつは、筋肉の張り具合にも関わっています。
筋肉の中には、筋肉の長さを測るセンサーがあります。筋紡錘(きんぼうすい)と呼ばれるものです。筋肉がいまどれくらい伸びているかを、休まず脳へ知らせています。
脳はこの情報をもとに、筋肉をどれくらい縮め、どれくらい緩めるかを決めています。
筋肉の「ものさし」がずれると、どうなるのでしょうか?
筋紡錘は、筋肉についている「ものさし」のようなものです。
交感神経の働きが強まると、このものさしの働きに影響が出ることが、研究のまとめで報告されています。筋肉の調整が乱れ、体の位置の感覚もずれやすくなります。こうした状態が、慢性的な筋肉の痛みにつながりうると考えられています。
ものさしの目盛りがずれると、脳は今の筋肉の長さを正しくつかめません。ちょうどいいところまで緩めることが、難しくなります。
私は、こう考えています。長さがはっきりしないとき、脳は念のために筋肉を張らせたままにしておく。「力を抜いたつもりなのに、抜けていない」首や肩は、こうして生まれるのではないかと。
緊張する場面のあとに首が張るのは、なぜでしょうか?
会議の前や、人前で話すとき。こうした場面では、交感神経が出ます。
それ自体は、体の自然な反応です。
困るのは、場面が終わっても交感神経が引っ込まないときです。ものさしがずれたまま、首の張りだけが残ります。緊張するたびにこれが重なると、張っている状態のほうが「いつもの首」になっていきます。
補足(少し専門的な話です)
筋紡錘は、筋肉の繊維のあいだに埋まっている、細長い形の感覚器です。筋肉が伸びると反応し、その情報を背骨の中(脊髄)と脳へ送ります。交感神経がこの感覚器の働きを変えることは、むち打ち症を手がかりにした研究のまとめで整理されています。
血の巡りには、どんな影響が出るのでしょうか?
交感神経は、体を「戦う・逃げる」準備に切り替える神経です。
心拍を上げ、血管を細くします。急いでいるときや、身構えるときには、なくてはならない働きです。
この交感神経の出方は、脳が上から決めています。指令の出どころは、脳幹(脳のいちばん下、首の付け根あたりにある部分)です。そこから背骨の中にある交感神経の出発点へ、指令が降りていることがわかっています。
つまり、交感神経が出たままになるのは、上から「出し続けて」という指令が続いているからです。
巡りが落ちると、体はどう感じるのでしょうか?
交感神経が出たままだと、血管は細いまま、呼吸も浅く速いままになります。
筋肉へ届く血の巡りが落ちると、筋肉は重く、こわばった感じになりやすいと考えられています。頭のほうでも、重さやぼんやりした感じが出やすくなります。
センサーが乱れて筋肉が張る。張ったところへ、巡りの落ちた状態が重なる。肩こりと頭の重さが、同じ根っこから出てくるのはこのためです。
肩のこりそのものが頭の痛みにつながる道すじは、「肩がこると、なぜ頭まで痛くなるのでしょうか?」でくわしくお話ししています。
なぜ、もんでもらってもまた戻ってしまうのでしょうか?

もんでもらうと、その場では筋肉がゆるみ、巡りも戻ります。気持ちがいいのは、体がちゃんと応えているからです。
それでも数日すると、同じ張りが戻ってきます。
張りのもとが、筋肉ではなく、上から降りてくる指令のほうにあるからです。
エアコンで考えてみてください。暑い部屋の窓を開けて、空気を入れ替えたとします。そのときは涼しくなりますが、温度の設定が高いままなら、しばらくすると部屋はまた同じ温度に戻ります。
もむことは、空気の入れ替えに近いものです。設定を決めているのは、脳のほうです。
脳の設定は、なぜ「張っていろ」のままなのでしょうか?
前頭前野(おでこの奥にある、考えたり気持ちを抑えたりする場所)は、緊張の反応にいつもブレーキをかけています。このブレーキの働きは、心拍のゆらぎとして測れることが報告されています。
ところが前頭前野は、ストレスにとても敏感な場所です。軽いストレスでも働きが落ち、ブレーキが外れやすくなることがわかっています。
疲れやストレスが続くと、ブレーキは弱ったままになります。交感神経は出たまま、指令は「張っていろ」のまま。もんでゆるめても、同じ指令がまた筋肉を張らせます。
脳が疲れたときにブレーキがどうゆるむのかは、「脳が疲れると、なぜ頭が痛くなるのでしょうか?」でもお話ししています。
何度も戻ってしまうのは、ご自分の努力が足りないからではありません。
だから当院では、こっている筋肉だけを相手にするのではなく、脳と神経へ届く入力から整えることを大切にしています。体からの感覚を脳へ届け、ブレーキ側に働きかける。そのための施術を、お一人おひとりの体を確かめながら組み立てています。
こんなときは、医療機関を受診してください
自律神経の不調だと思っていても、ほかの病気が隠れていることがあります。まずは医療機関で検査を受けてください。症状によっては、医師の診察が必要な場合があります。
特に、次のような頭痛のときは、すぐに受診してください。
- 突然、経験したことのない激しい頭痛が起きた
- 発熱があり、首の後ろが固まって前に曲げられない
- ろれつが回らない、片側の手足がしびれる、物が二重に見える
- いつもの頭痛と、痛み方や場所が明らかに違う
肩こりに加えて、次のような症状があるときも、早めに医療機関で相談してください。
- 腕や手にしびれがある
- 腕や手に力が入りにくい
当院でも施術の前に、医療機関への受診が必要な状態でないかを確認しています。
今日からできることはありますか?

肩甲骨を、後ろへ大きく回してみてください。
動かすことで、筋肉からの感覚が脳に届きます。脳が今の筋肉の状態をつかみ直すきっかけになる、と私は考えています。ずれたものさしを、もう一度当て直すようなイメージです。
やり方はかんたんです。
- 両手の指先を、それぞれ同じ側の肩に置く
- ひじで大きな円を描くように、後ろへ回す
- これを10回
肩甲骨が背中の真ん中へ寄っていくのを感じながら、ゆっくり回すのがおすすめです。息は止めずに続けてください。
おすすめのタイミングは、仕事や家事の区切りです。1〜2時間に1回を目安にしてみてください。
円の大きさは、痛みが出ない範囲までにしてください。このセルフケアで張りが取れるとお約束するものではありません。脳へ「今の筋肉の状態」を知らせる、小さな入力のひとつと考えてください。
まとめ
- 筋肉の中には、長さを測るセンサー(筋紡錘)があり、脳はその情報で筋肉の張り具合を決めています
- 交感神経が出たままになると、このセンサーの働きが乱れ、筋肉が張ったままになりやすくなります
- 交感神経は血管を細くし、呼吸も浅くするので、巡りが落ちて肩や頭が重くなりやすくなります
- もんでも戻ってしまうのは、上から降りてくる指令が「張っていろ」のままだからです
- 肩甲骨を後ろへ大きく回すことは、脳が筋肉の状態をつかみ直すきっかけになると考えています
長く続く頭痛や肩こりは、我慢が足りないせいではありません。上から降りてくる指令に目を向けると、見え方が変わってきます。
最後までブログをお読みいただき、ありがとうございました。皆様の健康と、笑顔あふれる毎日を心よりお祈りしております。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾大介)
この記事を書いた人

作尾 大介(さくお だいすけ)
- 資格:柔道整復師・はり師・きゅう師(いずれも国家資格)
- 施術歴:2005年より20年以上
- 得意分野:頭痛、肩こり、腰痛、坐骨神経痛、五十肩など、長引く慢性的な痛みと体の不調
- 所属院:こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市中町278-3 ひかりハイツ101)
参考文献・引用元
- Passatore M, Roatta S. Influence of sympathetic nervous system on sensorimotor function: whiplash associated disorders (WAD) as a model. Eur J Appl Physiol 2006;98(5):423-449.
- Guyenet PG. The sympathetic control of blood pressure. Nat Rev Neurosci 2006;7(5):335-346.
- Thayer JF, Lane RD. A model of neurovisceral integration in emotion regulation and dysregulation. J Affect Disord 2000;61(3):201-216.
- Arnsten AFT. Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nat Rev Neurosci 2009;10(6):410-422.






コメント