
この記事では、朝起きても疲れが取れていない理由をお伝えします。結論は、眠っている間も、体が「緊張モード」から切り替わりきっていないからです。ストレス反応は本来、ストレスが終われば止まります。ところが脳のブレーキが弱っていると止まりにくく、休むための時間に休みきれません。
「7時間は寝たはずなのに、朝から体が重い」
「目覚ましが鳴る前に目が覚めて、そこから眠れない」
「起きたばかりなのに、もう肩が張っている」
そんなお悩みがある時には、このブログがお役に立てると考えています。
結論からお伝えします。眠っている間も、体が「緊張モード」から切り替わりきっていないのです。
こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています院長の作尾大介です。
朝の疲れは、院でもよく耳にするお悩みです。「寝る時間が足りないのかな」と、早めに布団に入るようにしている方もいらっしゃいます。それでも朝の重さが変わらないと、自分の体が弱いように感じてしまうものです。
それは、気合いが足りないからでも、体が弱いからでもありません。
今日は、寝ても疲れが残る理由を、体の仕組みからお話しします。
眠っている間、体はどうやって休んでいるのでしょうか?
自律神経には、緊張する側(交感神経)と、休む側(副交感神経)があります。
一般的に、眠っている間は緊張する側が静まり、休む側が働きやすくなると言われています。心臓の打ち方も呼吸も、昼間よりゆったりしていきます。昼間に使った体を、夜のうちに立て直す時間です。
体の切り替えは、エアコンにたとえるとどうなるのでしょうか?
エアコンは、設定した温度を自動で保ってくれます。昼間は暑さに合わせて強く運転し、夜は設定を変えて静かな運転に切り替えます。
体でいえば、この設定を決めているのが脳です。
自律神経は、入ってきた情報に自動で反応する神経です。暑い、寒い、急いでいる、気になることがある。そうした情報に、意識しなくても反応してくれます。その反応が行き過ぎないように、脳がブレーキをかけて調整しています。
ところが、夜になっても設定が切り替わらないことがあります。リモコンで「静かに」を押したはずなのに、昼間の強い運転のまま回り続けている状態です。
朝の疲れは、この状態で一晩を過ごしたあとの体だと考えると、わかりやすくなります。
なぜ、寝ても緊張モードが抜けないのでしょうか?

まずお伝えしたいのは、ストレス反応そのものは悪者ではない、ということです。
急いでいるとき、人前で話すとき。体は緊張する側に傾き、心拍を上げて力を出せるように備えます。これは、体を守るための大切な反応です。
そして本来は、ストレスが終われば止まるようにできています。
ところが、この反応がうまくいかない形がいくつかあると報告されています。何度も繰り返す。なかなか慣れない。必要なときに出てこない。そして、ストレスが終わっても止まらない。
朝の疲れに深く関わるのは、この最後の形です。
昼間の出来事はもう終わっているのに、体のほうはまだ身構えている。その身構えが、夜まで持ち越されてしまうのです。
たとえば、夕方に言われた一言が、布団に入ってからも頭の中でくり返される。体は横になっているのに、胸のドキドキがなかなか落ち着かない。これも、反応が止まりきっていない状態の一つです。
なぜ、反応が止まらなくなるのでしょうか?
反応を止める役目を担っているのが、脳のブレーキです。
中心になるのは、前頭前野(おでこの奥にある、考えたり気持ちを抑えたりする場所)です。前頭前野は、扁桃体(不安や危険に反応する場所)などに、いつもブレーキをかけています。
ところがこの前頭前野は、脳の中でもとくにストレスに敏感な場所です。軽いストレスでも、働きがすぐに落ちることがわかっています。働きが落ちると、扁桃体などの反応にかかっていたブレーキが外れてしまいます。
ブレーキの弱まりは、心拍のゆらぎにも表れます。前頭前野のブレーキが弱ると、このゆらぎが小さくなることが研究で示されています。
補足(少し専門的な話です)
心臓は、時計のようにきっちり同じ間隔で打っているわけではありません。1拍ごとに、ほんのわずかに間隔が揺れています。これを心拍変動(しんぱくへんどう)と呼びます。前頭前野のブレーキがしっかりかかっているときは、このゆらぎが大きく保たれます。ブレーキのかかり具合を、外から知る手がかりになっています。
ブレーキが弱ったまま夜を迎えると、眠っていても緊張モードから切り替わりきりません。
目覚ましの前に目が覚めて、そこから眠れない。起きたときから肩が張っている。そうしたことの背景には、この仕組みがあると考えられます。
寝る時間を延ばしても朝の重さが変わらないのは、このためと考えられます。大切なのは眠った長さだけではありません。眠っている間に、体がどれだけ休む側へ切り替われたかも関わっています。
気持ちが弱いからでも、性格のせいでもありません。脳と神経が、そう動いているのです。
「疲れが取れない朝」が続くと、どうなっていくのでしょうか?
ストレスへの反応が止まらない状態が続くと、体には少しずつ負担がたまっていきます。
研究者はこれを「アロスタティック負荷」と呼んでいます。ストレスに対応し続けたことで、たまっていく体の負担のことです。この負担が積み重なると、さまざまな不調につながると報告されています。
ここで、脳のエネルギーのお話をします。
脳の重さは、体重の約2%ほどです。それなのに、体が使う酸素とエネルギーの約20%を使っています。しかもその量は、何をしていてもほぼ一定で、高いままです。
脳は、眠っている間もたくさんのエネルギーを使い続けている、ということです。
そのうえ、夜に緊張モードが抜けきらないとどうなるでしょうか。休むはずの時間に、脳も体も十分に休めません。立て直しが追いつかないまま、朝を迎えることになると考えられます。
すると、次のような流れが起きやすくなります。
- 夜、緊張モードが抜けきらず、休みきれない
- 立て直しが追いつかないまま、朝を迎える
- 翌日、脳のブレーキがさらに弱りやすくなる
- 反応が止まりにくくなり、また夜に持ち越す
ぐるぐると回る形になっていると考えられます。
ただ、これは「体が壊れている」という意味ではありません。起きているのは、あくまで仕組みの話です。仕組みがわかれば、どこから手をつけるかも見えてきます。
当院では、自律神経そのものではなく、自律神経を調整している脳に働きかける施術を行っています。
こんなときは、医療機関を受診してください
自律神経の不調だと思っていても、ほかの病気が隠れていることがあります。まずは医療機関で検査を受けてみてください。
次のような場合は、一般的に受診が勧められています。
- 家族から、寝ているときに呼吸が止まっている、いびきがひどいと言われた
- 微熱が続いている
- 体重が急に減った
- 日中、耐えられないほど眠い
症状によっては、医師の診察が必要な場合があります。当院でも施術の前に、医療機関への受診が必要な状態でないかを確認しています。
気分の落ち込みが続いているときも、ひとりで抱えないでください。一日中気分が沈み、何をしても楽しめない。そこに眠れない・食欲がないといった体の症状が重なることがあります。日常生活に大きな支障が出ているときは、自己判断せず、精神科や心療内科、かかりつけの医師に相談してみてください。
「死にたい」という気持ちがあるときは、すぐに相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(厚生労働省)は、かけた所在地の公的な相談窓口につながります。
今日からできることはありますか?

目が覚めたら、起き上がる前に、布団の中で手足を動かしてみてください。
脳は、体から届く感覚の情報をもとに、体の状態を予測して整えていることがわかっています。朝、手足を動かすと、その感覚が脳に届きます。「体が起きた」ことを、脳に知らせるためのひと手間です。
やり方はかんたんです。仰向けに寝たままで行います。
- 両手で「グー」と「パー」を10回くり返す
- 足首を、手前に引く・向こうに伸ばす、を10回くり返す
- 両手を頭の上に伸ばして、大きく伸びを1回(5秒)
全部で1分ほどです。タイミングは、目が覚めてすぐ、起き上がる前です。
布団の中でできるので、着替えや準備の前に、寝たままの姿勢で始められます。目覚ましを止めたら、そのまま手を握ってみるところからで十分です。
足がつりそうなときや痛みがあるときは、回数を減らしたり、小さく動かしたりしてください。無理のない範囲で大丈夫です。
これで疲れがすっきり取れる、というものではありません。眠っていた体から脳へ「起きたよ」と合図を送る、小さな朝の習慣として試してみてください。
寝る前のストレッチは、こちらの記事で紹介しています。
まとめ
- 一般的に、眠っている間は緊張する側の神経が静まり、休む側が働きやすくなると言われています
- ストレス反応は本来、ストレスが終われば止まるようにできています
- ブレーキ役の前頭前野はストレスに敏感で、弱ると反応が止まりにくくなります
- その状態で眠ると緊張モードが抜けきらず、休むための時間に休みきれません
- 朝は起き上がる前に手足を動かして、「体が起きた」ことを脳に知らせてみてください
朝の疲れは、怠けや気持ちの弱さではありません。体の中に、ちゃんと理由があります。
最後までブログをお読みいただき、ありがとうございました。皆様の健康と、笑顔あふれる毎日を心よりお祈りしております。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾大介)
この記事を書いた人

作尾 大介(さくお だいすけ)
- 資格:柔道整復師・はり師・きゅう師(いずれも国家資格)
- 施術歴:2005年より20年以上
- 得意分野:頭痛、肩こり、腰痛、坐骨神経痛、五十肩など、長引く慢性的な痛みと体の不調
- 所属院:こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市中町278-3 ひかりハイツ101)
参考文献・引用元
- McEwen BS. Protective and damaging effects of stress mediators. N Engl J Med 1998;338(3):171-179.
- Arnsten AFT. Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nat Rev Neurosci 2009;10(6):410-422.
- Thayer JF, Lane RD. A model of neurovisceral integration in emotion regulation and dysregulation. J Affect Disord 2000;61(3):201-216.
- Raichle ME, Gusnard DA. Appraising the brain’s energy budget. Proc Natl Acad Sci USA 2002;99(16):10237-10239.
- Sterling P. Allostasis: a model of predictive regulation. Physiol Behav 2012;106(1):5-15.
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」うつ病. https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/






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