
この記事では、夜になっても頭が冴えて眠れない理由をお伝えします。結論は、眠りに入るための切り替えがうまくいっていないからです。眠るには、緊張する側の神経が静まり、休む側へ移る必要があります。脳のブレーキが弱っていると、体は疲れていても脳が起きたままになります。そこに夜の明るい光が重なると、眠りの合図も遅れます。
「体はくたくたなのに、布団に入ると目が冴えてくる」
「夜中や明け方に目が覚めて、そこから眠れない」
「寝る前にスマホを見るのが、どうしてもやめられない」
このようなお悩みをお持ちの方に、少しでもお役に立てる情報をお届けできればと思います。
結論からお伝えします。眠れないのは、脳が「まだ起きていなきゃ」のまま、夜を迎えているからです。
こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています院長の作尾大介です。
眠れない夜のお悩みは、院でもよくお聞きします。「早く寝なきゃ」と思うほど、かえって目が冴えてしまう。そんな夜が続くと、眠ること自体が苦手になったように感じてしまいます。毎晩のように眠れないのは、本当につらいことです。
眠れないのは、気持ちの持ち方が悪いからではありません。
今日は、夜に頭が冴えてしまう理由を、体の仕組みからお話しします。
眠りに入るとき、体の中では何が切り替わっているのでしょうか?
自律神経には、緊張する側(交感神経:こうかんしんけい)と、休む側(副交感神経:ふくこうかんしんけい)があります。
昼間は、緊張する側がよく働いています。仕事をする、家事をこなす、人と話す。そうした場面で、心臓や呼吸を少し速めて、体が動けるように備えてくれています。
眠りに入るときは、この働きが入れ替わります。研究で、深い眠り(ノンレム睡眠)に入ると、自律神経が緊張する側から休む側へ移ることが報告されています。
眠りは、「目を閉じたら始まる」ものではなく、「切り替えが済んだら始まる」ものです。
眠りへの切り替えは、何にたとえられるのでしょうか?
以前、自律神経をエアコンの自動調節にたとえて、夜は静かな運転に切り替わるとお話ししました。今日は、別のたとえで考えてみます。
眠りに入るのは、お店の閉店に似ています。
お客さんが帰ったら、照明を落とし、レジを締めて、シャッターを下ろします。この順番で片づけが進むから、お店は「お休み」に入れます。
ところが、閉店の時間になっても片づかないことがあります。ひとつは、店員さんが「まだお客さんが来るかもしれない」と身構えたままのとき。もうひとつは、照明がついたままで、外から見るとまだ営業中のように見えるときです。
この2つが、夜に頭が冴えてしまうことと深く関わっています。順番にお話しします。
なぜ、疲れているのに頭が冴えて眠れないのでしょうか?
まずお伝えしたいのは、「体の疲れ」と「脳が起きているかどうか」は、別のものだということです。
体がくたくたでも、脳が起きたままなら、眠りには入れません。お店でいえば、片づけを終えて疲れているのに、店員さんがまだ身構えている状態です。
研究では、眠れないことに悩む人は、眠っている間も心拍が高いと報告されています。緊張する側の神経の働きも、高いままです。昼も夜も、体が「起きすぎ」の状態が続いていると考えられています。
この状態は、過覚醒(かかくせい:頭と体が必要以上に起きている状態)と呼ばれています。
眠っている間も緊張する側が高いままだと、眠りは浅くなりやすいと考えられます。夜中や明け方に目が覚めて、そこから眠りにくい。その背景にも、この過覚醒があると考えられています。
何が、過覚醒を続けさせているのでしょうか?
過覚醒には、いくつかのことが重なって続くとされています。
ひとつは、ストレスです。もうひとつは、眠りを遠ざけてしまう夜の習慣です。そして、心配や考えごとが、頭の中でくり返されることです。
布団に入ってから、明日の段取りを何度もなぞってしまう。やり残したことが、ひとつずつ浮かんでくる。考えるほど、頭はますます冴えていきます。
これは、気持ちが弱いから起きることではありません。脳のブレーキの話なのです。
なぜ、脳のブレーキが弱ると眠りにくくなるのでしょうか?
考えごとや身構えにブレーキをかけているのは、前頭前野(ぜんとうぜんや:おでこの奥にある、考えたり気持ちを抑えたりする場所)です。
前頭前野は、扁桃体(へんとうたい:不安や危険に反応する、脳の見張り役)に、いつもブレーキをかけています。
ところが前頭前野は、脳の中でもとくにストレスに敏感な場所です。軽いストレスでも、働きがすぐに落ちることが報告されています。働きが落ちると、扁桃体へのブレーキが外れ、見張り役の警戒が前に出てきます。
見張り役が「まだ気を抜くな」と言っているあいだは、体は休む側へ切り替わりにくくなります。お店のシャッターが下りないのは、店員さんが怠けているからではなく、見張り役が警報を止めないからです。
疲れているのに頭が冴えるのは、性格のせいではありません。脳と神経の働きによるものと考えられています。
夜の光は、眠りにどう関わっているのでしょうか?

もうひとつの理由が、夜の明かりです。お店でいえば、照明がついたままの状態です。
体には、眠りの準備をうながすメラトニンというホルモンがあります。暗くなると出てきて、「そろそろ休む時間ですよ」と体に知らせる、いわば閉店の合図です。
厚生労働省の睡眠ガイドによると、メラトニンは寝る時刻の約2時間前から出始めます。その時間帯に、照明やスマートフォンの強い光を浴びると、分泌が抑えられます。その結果、寝つきが妨げられるとされています。
光の情報は、どうやってメラトニンに届くのでしょうか?
光の情報は、目から入ります。そこから、脳の中の体内時計へ届きます。
体内時計からの合図は、背骨の中にある交感神経の出発点を通ります。そして首の神経を経て、メラトニンを出す場所へ届きます。
つまり、夜の光の情報は、自律神経の通り道を使ってメラトニンの量を決めていると考えられています。眠りと自律神経と光は、1本の道でつながっているのです。
補足(少し専門的な話です)
体内時計の中心は、視交叉上核(しこうさじょうかく)と呼ばれる、脳の奥の小さな場所です。メラトニンを出しているのは、松果体(しょうかたい)という脳の中の小さな器官です。目から視交叉上核へ届いた光の情報は、背骨の中の交感神経の出発点を通ります。そして首の交感神経の中継点を経て、松果体に伝わります。
ふつうの部屋の明かりでも、影響はあるのでしょうか?
あると報告されています。
健康な116人を対象にした研究があります。寝る前の8時間を、ふつうの室内の明かりで過ごした場合と、薄暗い光で過ごした場合を比べました。室内の明かりでは、メラトニンの出始めが遅れました。さらに、メラトニンが出ている時間が約90分短くなりました。
光る画面についての研究もあります。寝る前に光る画面で読書をすると、紙の本より寝つくまでの時間が長くなりました。メラトニンも減り、翌朝の目覚めも悪かったと報告されています。
まぶしいと感じるほどの光でなくても、夜の明かりは「まだ営業中」の合図になりうる、ということです。
寝る前のスマホがやめられないことを、責める必要はありません。仕組みがわかれば、意志の力に頼るより、置き場所や明かりを変えるほうが楽になります。
脳の見張り役が身構えたまま、そこに夜の明かりが重なる。この2つが重なると、体は疲れていても、閉店の準備に入りにくくなります。
当院では、自律神経そのものではなく、自律神経を調整している脳に働きかける施術を行っています。
こんなときは、医療機関を受診してください
自律神経の不調だと思っていても、ほかの病気が隠れていることがあります。まずは医療機関で検査を受けてみてください。
次のような場合は、一般的に受診が勧められています。
- 眠れない状態が続いて、日中の生活に支障が出ている
- 家族から、寝ているときに呼吸が止まっている、いびきがひどいと言われた
- 脚がむずむずして、眠れない
- 日中、耐えられないほど眠い
睡眠薬などのお薬を処方されている方は、自己判断でやめたり減らしたりしないでください。気になることは、主治医に相談してみてください。
症状によっては、医師の診察が必要な場合があります。当院でも施術の前に、医療機関への受診が必要な状態でないかを確認しています。
気分の落ち込みが続いているときも、ひとりで抱えないでください。一日中気分が沈み、何をしても楽しめない。そこに眠れない・食欲がないといった体の症状が重なることがあります。日常生活に大きな支障が出ているときは、自己判断せず、精神科や心療内科、かかりつけの医師に相談してみてください。
「死にたい」という気持ちがあるときは、すぐに相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(厚生労働省)です。かけた所在地の公的な相談窓口につながります。
今日からできることはありますか?

寝る時刻の2時間前に、部屋の明かりを1段階落としてみてください。
メラトニンが出始めるのが、寝る時刻の約2時間前だからです。この時間から明かりを控えめにすることで、体に「閉店の時間ですよ」と伝えやすくなります。
やり方はかんたんです。
- 寝る時刻を決めて、その2時間前を「明かり落としの時刻」にする(23時に寝るなら21時)
- その時刻になったら、部屋の照明を1段階暗くする(天井の明かりを消して、スタンドや手元の明かりにする、など)
- スマートフォンは寝室の外で充電し、寝室には持ち込まない
タイミングは、毎晩、寝る時刻の2時間前です。
厚生労働省の睡眠ガイドでも、寝室にはスマートフォンを持ち込まず、暗くして眠ることが勧められています。
2時間前に間に合わない日は、気づいたときに明かりを1段階落とすところからで大丈夫です。暗すぎて足元が見えにくいときは、転ばないように手元の明かりを残してください。
あわせて、朝起きたらカーテンを開けて、朝の光を浴びてみてください。睡眠ガイドでも勧められている、夜の眠りへの準備の一つです。
これで眠れるようになる、と約束できるものではありません。夜の明かりを少し落として、体に閉店の合図を送る。そんな夜の習慣として試してみてください。
まとめ
- 眠りに入るには、自律神経が緊張する側から休む側へ切り替わる必要があります
- 眠れないことに悩む人は、眠っている間も緊張する側が高く、昼も夜も「起きすぎ」が続いていると報告されています
- ブレーキ役の前頭前野はストレスに敏感で、弱ると見張り役の扁桃体の警戒が前に出てきます
- メラトニンは寝る時刻の約2時間前から出始め、夜の明るい光で抑えられます
- 寝る時刻の2時間前に明かりを1段階落とし、スマートフォンは寝室の外に置いてみてください
夜に頭が冴えてしまうのは、気持ちの弱さではありません。体の中に、ちゃんと理由があります。眠れない夜が続いてお困りのときは、お気軽にご相談ください。
最後までブログをお読みいただき、ありがとうございました。皆様の健康と、笑顔あふれる毎日を心よりお祈りしております。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾大介)
この記事を書いた人

作尾 大介(さくお だいすけ)
- 資格:柔道整復師・はり師・きゅう師(いずれも国家資格)
- 施術歴:2005年より20年以上
- 得意分野:頭痛、肩こり、腰痛、坐骨神経痛、五十肩など、長引く慢性的な痛みと体の不調
- 所属院:こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市中町278-3 ひかりハイツ101)
参考文献・引用元
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- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」. https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」うつ病. https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/






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