
この記事では、休みの日に何もする気が起きない理由をお話しします。結論は、怠けではありません。平日に使い切った脳が「省エネモード」に入っています。そこへ、動かずに過ごすことで脳に届く感覚が減り、エンジンがかかりにくくなっているのです。
「休みの日は、昼までベッドから出られない」
「やりたいことはあるのに、体が動かない」
「一日ゴロゴロして、夕方になると自己嫌悪になる」
そんなお悩みがある時には、このブログがお役に立てると考えています。
結論からお伝えします。それは怠けではなく、脳が「省エネモード」に入って、エンジンがかかりにくくなっている状態です。
こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています院長の作尾大介です。
院でお話をうかがっていると、「休みの日、結局なにもできなかった」という言葉をよく耳にします。そのあとに続くのは、たいてい「私が怠けているだけなんですけど」という一言です。今日は、その「怠け」の正体についてお話しします。
なぜ、休みの日に限って体が動かないのでしょうか?
平日のあいだ、体は緊張する側の神経に支えられて動いています。
自律神経のうち、緊張する側の神経を交感神経と呼びます。朝のしたく、通勤、仕事、家のこと。やることが次々にあるあいだは、この神経が体を前へ押し出してくれます。
少しくらい疲れていても、緊張のおかげで走りきれてしまうのです。
ところが休みの日の朝、その緊張がふっと切れます。
すると、平日のあいだ後回しにしていた疲れが、まとめて表に出てきます。休みの日に限って動けないのは、このためです。
脳は、じっとしていてもエネルギーを使っているのでしょうか?
使っています。脳は、体の中でいちばんエネルギーを使う場所です。
重さは体重の約2%しかありません。それなのに、体が使う酸素とエネルギーの約20%を使っています。しかも、その量は何をしていてもほぼ一定で、高いままだと研究でわかっています。
平日は、そのエネルギーを考えごとや気づかいに使い続けています。仕事の段取り、家族の予定、言われた一言。体は座っていても、頭は休みなく回っています。
段取りを考える場所は、なぜ疲れやすいのでしょうか?
なかでも疲れやすいのが、前頭前野(おでこの奥にある、考えたり段取りを立てたりする場所)です。
前頭前野は、脳の中でもストレスにとても敏感な場所です。軽いストレスでも、働きがすぐに落ちやすいことがわかっています。
「何から手をつけよう」「まず着替えて、それから買い物に行って」。休日の予定を頭の中で組み立てるのも、この場所の仕事です。平日のストレスで前頭前野が疲れていれば、この組み立てがうまく進みません。
私は、「やる気が出ない」は、脳がエネルギーを節約しようとしているサインだと考えています。
使い切った脳が、これ以上使いすぎないように、省エネモードに入っている。気持ちの弱さではなく、体の仕組みで説明できることです。
何もしないで過ごすと、なぜかえって疲れが残るのでしょうか?

「せっかくの休みだから、何もしないで休もう」。そう決めて一日横になっていたのに、夕方になっても体が重い。月曜の朝も、すっきりしない。
ここに、もうひとつの理由があります。
脳は、感覚という入力があって初めて、正しい反応を出せると私は考えています。
目に入る景色、耳に届く音、肌にふれる空気、足の裏が地面を踏む感じ。こうした感覚は、起きているあいだ絶えず脳へ届いています。
脳はその情報をもとに、体がいまどんな状態かを予測しています。そして、先回りで体を調整していると考えられています。
じっとしていると、脳に届く情報はどう変わるのでしょうか?
一日じっとしていると、この入力がぐっと減ります。
見えるのは、天井とスマートフォンの画面くらい。聞こえる音も、ほとんど変わりません。足の裏は、何も踏んでいません。
体を動かさないので、呼吸も浅いままです。
入ってくる情報が少ないと、脳は「今日は動かなくていい日だ」と受け取ります。そして、省エネモードのまま一日が過ぎていきます。
休んでいるのに疲れが残るのは、休み方が下手だからではありません。脳に届く入力が足りていないからだと、私は考えています。
補足(少し専門的な話です)
脳が予測して先回りで体を調整するしくみを、アロスタシス(予測による調整)と呼びます。脳は過去の経験と、いま入ってくる感覚の情報を合わせて、「次に何が必要か」を見積もっています。入ってくる感覚が少ないと、その見積もりの材料も減ってしまいます。
乗らない車ほど、エンジンがかかりにくくなるのはなぜでしょうか?
車のバッテリーは、走っているあいだに充電されます。
そのため、しばらく乗らずに置いておくと、かえってバッテリーが弱ってしまいます。いざ出かけようとしたとき、エンジンがかかりにくくなるのはこのためです。
脳も、これに似ています。
じっと休ませているつもりでも、入力という充電が届かないと、次に動き出す力が出にくくなります。休ませることと、何も入れないことは、同じではありません。
「怠け」と「脳の省エネモード」は、どう違うのでしょうか?
いちばんの違いは、「できるのに、しない」のか、「したいのに、エンジンがかからない」のかです。
怠けは、やろうと思えばできるのに、しないことを選んでいる状態です。
省エネモードは違います。やりたいことは頭にあるのに、体がついてこない。気持ちと体のあいだに、ずれがあります。
「やりたいのに動けない」と感じているなら、それはエンジンがかかりにくくなっているサインです。
自分を責めると、なぜエンジンはもっとかかりにくくなるのでしょうか?
夕方になって、「また一日むだにした」と自分を責める。この時間が、いちばんつらいところです。
けれども、責める気持ちは、脳にとってはストレスになります。先ほどの前頭前野は、ストレスで働きが落ちやすい場所でした。
つまり、責めれば責めるほど、エンジンはさらにかかりにくくなります。
「動けない」「責める」「もっと動けない」。この輪から、気合いで抜け出そうとしなくて大丈夫です。
では、何から始めればよいのでしょうか?
おすすめしたいのは、気合いを入れることではありません。脳に、小さな入力を届けることです。
大きな予定を立てる必要はありません。掃除も、買い物も、出かける予定も、いったん横に置いてかまいません。
まずは、ほんの数分、外の感覚にふれるところから始めてみてください。エンジンは、いきなり全開にしなくてもかかります。ほんのちょっとだけ、回してあげればいいのです。
こんなときは、医療機関を受診してください
「省エネモードかな」と思っていても、ほかの病気が隠れていることがあります。だるさや気力の出なさが続くときは、まず医療機関で検査を受けてください。
症状によっては、医師の診察が必要な場合があります。特に、次のようなときは早めに受診してください。
- だるさに加えて、熱が続いている
- 食事は変わらないのに、体重が急に減った
- 少し動いただけで息が切れる、胸が苦しくなる
気分の落ち込みが続いているときは、どうすればよいのでしょうか?
休みの日に動けないことに加えて、次のような状態が重なっていないか、振り返ってみてください。
- 一日中、気分が落ち込んでいる
- 以前は好きだったことも含めて、何をしても楽しめない
- 眠れない、食欲がない、疲れやすいといった体の症状がある
- 仕事や家のことなど、日常生活に大きな支障が出ている
こうした状態が重なっているときは、うつ病の可能性があります。自己判断せず、精神科や心療内科、かかりつけの医師に相談してください。
特に気をつけたいのは、「何をしても楽しめない」状態が続き、生活に支障が出ているときです。「怠け」や「省エネモード」で片づけないでください。
それは、専門の医師に相談してよいサインです。相談することは、弱さではありません。
「死にたい」という気持ちがあるときは、ひとりで抱えずに、すぐに相談してください。
こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(厚生労働省。電話をかけた所在地の、公的な相談窓口につながります)
当院でも施術の前に、医療機関への受診が必要な状態でないかを確認しています。
今日からできることはありますか?

休みの日の朝、起きてから1時間以内に、5分だけ外に出てみてください。
それだけです。運動のために歩く必要はありません。
やることは、次のどれか1つでかまいません。
- ゴミを出しに行く
- 郵便受けを見に行く
- 家の前を1往復する
着替えなくても大丈夫です。部屋着の上に1枚はおって、サンダルをつっかけるくらいでかまいません。
大切なのは、外の感覚を「入力」として脳に届けることです。外に出たら、次の4つを少しだけ感じてみてください。
- 肌にふれる、外の空気
- 車や鳥、風の音
- 部屋の中とは違う明るさ
- 足の裏が地面を踏む感じ
5分たったら、部屋に戻ってまた横になってもかまいません。
これで動けるようになる、とお約束するものではありません。じっとしたままの脳に、外からの入力を届けるきっかけのひとつです。
できなかった朝があっても、それで大丈夫です。次の休みの朝に、また試してみてください。
まとめ
- 休みの日に何もする気が起きないのは、怠けではありません
- 平日は緊張する側の神経で動いていて、休日に緊張が切れると、たまった疲れが表に出ます
- 脳は体が使うエネルギーの約20%を使っていて、使い切ると省エネモードに入ると私は考えています
- じっとしていると脳に届く感覚が減り、エンジンがかかりにくくなります
- 休日の朝、起きて1時間以内に5分だけ外に出て、感覚を脳に届けてみてください
動けない休日は、ご自分の性格のせいではなく、脳の状態から説明できます。まずは玄関の外の5分から、始めてみませんか?
最後までブログをお読みいただき、ありがとうございました。皆様の健康と、笑顔あふれる毎日を心よりお祈りしております。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾大介)
この記事を書いた人

作尾 大介(さくお だいすけ)
- 資格:柔道整復師・はり師・きゅう師(いずれも国家資格)
- 施術歴:2005年より20年以上
- 得意分野:頭痛、肩こり、腰痛、坐骨神経痛、五十肩など、長引く慢性的な痛みと体の不調
- 所属院:こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市中町278-3 ひかりハイツ101)
参考文献・引用元
- Raichle ME, Gusnard DA. Appraising the brain’s energy budget. Proc Natl Acad Sci USA 2002;99(16):10237-10239.
- Arnsten AFT. Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nat Rev Neurosci 2009;10(6):410-422.
- Sterling P. Allostasis: a model of predictive regulation. Physiol Behav 2012;106(1):5-15.
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」うつ病. https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/






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