
この記事では、季節の変わり目や暑い時期に体調を崩しやすい理由をお話しします。結論は、体温を一定に保つ「脳の自動調節」が、この時期に設定を大きく切り替えているからです。暑さに体が慣れるまでは、心臓や体への負担が大きくなります。夏は眠りも浅くなりやすく、回復が追いつかないまま次の季節に入ってしまいます。
「夏の終わりになると、どっと疲れが出る」
「季節が変わるたびに、鼻や喉、背中の張りが出てくる」
「暑さでバテてから、頭がずっとぼーっとしている」
このようなお悩みをお持ちの方に、少しでもお役に立てる情報をお届けできればと思います。
結論からお伝えします。体温を保っているのは脳の自動調節で、季節の変わり目は、その設定を大きく切り替える時期です。
こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています院長の作尾大介です。
「季節の変わり目になると、毎年どこかの調子が崩れるんです」。院で、よく耳にする言葉です。毎年のことだと、自分の体が弱いせいだと感じてしまう方もいます。毎年くり返す不調に振り回されるのは、本当に大変なことです。今日は、季節と体の関係を、体温の仕組みからお話しします。
体温は、誰がどうやって調整しているのでしょうか?

体温を一定に保っているのは、脳です。
ご自分で「今日は暑いから汗を出そう」と考えているわけではありません。脳の中の神経のネットワークが、意思とは関係なく、自動で調整しています。研究でも、体温を一定に保つことは、脳の神経ネットワークの大切な仕事だと考えられています。
寒いとき、体は何をしているのでしょうか?
寒いときの体は、熱を逃がさないように動きます。
- 皮膚の血管を締める:体の表面を流れる血を減らして、熱が外へ逃げにくくする
- ふるえる:筋肉を小刻みに動かして、熱をつくる
- 褐色脂肪(かっしょくしぼう)で熱をつくる:熱をつくることが得意な脂肪を働かせる
冬に手足の先が冷たくなるのは、皮膚の血管を締めて、体の中心の熱を守っているからです。
暑いとき、体は何をしているのでしょうか?
暑いときは、反対に熱を外へ逃がします。
汗をかいて、汗が乾くときに熱を奪ってもらいます。皮膚の血管を広げて、体の表面に血を多く流し、そこから熱を逃がします。暑い日に顔や手が赤くなるのは、このためです。
エアコンのたとえは、どこまで当てはまるのでしょうか?
このシリーズでは、自律神経をエアコンの自動調節にたとえてきました。「病院で「自律神経失調症」と言われたら、体の中では何が起きているのでしょうか?」はこちらです。
エアコンを27度に設定したとします。空気が入れ替わっても、外の気温が上がって部屋が暑くなっても、エアコンはその変化を感じとります。そして、いつも27度に保ってくれます。
体温について言えば、これはたとえ話というより、ほぼそのままの話です。
- 設定温度を決めているのは、脳
- 温度を測るセンサーは、皮膚などで感じる暑さ・寒さ
- 冷房にあたるのが、汗と皮膚の血流
- 暖房や保温にあたるのが、血管を締める・ふるえ・褐色脂肪
エアコンの制御が狂うと、急に冷やしすぎたり、温度が上がり続けたりします。体でも、自動調節がずれると、周りの温度に合わない反応が出やすくなります。
補足(少し専門的な話です)
褐色脂肪(かっしょくしぼう)は、熱をつくることを得意とする脂肪です。皮膚の血管を締める指令や、褐色脂肪に熱をつくらせる指令は、交感神経(こうかんしんけい:緊張する側の自律神経)を通って届きます。体温の調整は、自律神経の仕事そのものと考えられています。
季節の変わり目に、なぜ体がついていきにくいのでしょうか?
季節の変わり目は、エアコンでいえば冷房と暖房を切り替える時期です。
夏は、熱を逃がすほうへ。冬は、熱を保つほうへ。脳は、体の調整の向きそのものを大きく入れ替えています。設定を少し上げ下げするのとは、わけが違います。
暑さに体が慣れるには、何が必要なのでしょうか?
体は、暑さに少しずつ慣れていきます。
研究では、暑さに体が慣れると、汗のかき方や皮膚の血流、体温、心臓の負担、体の水分のバランスが変わることが報告されています。体全体で、暑さへの備え方を組み替えているわけです。
大切なのは、その慣れ方です。どれくらい慣れるかは、暑さに当たる強さ・時間・回数で決まるとされています。
裏を返せば、暑さに当たる機会が少ないうちは、体はまだ慣れていません。慣れる前の体は、同じ暑さでも、心臓や体にかかる負担が大きくなります。
慣れる前の時期には、何が起きているのでしょうか?
春から夏にかけて、急に暑くなる日があります。体の準備が整う前に、真夏のような暑さがやってくる日です。
こうした日に体がこたえるのは、気持ちの問題ではありません。暑さへの慣れが追いついていない時期だからだと考えられます。
秋になると、今度は熱を保つほうへ設定を戻していきます。朝晩は冷えるのに、昼間はまだ暑い。こうした日には、熱を逃がす働きと保つ働きを、一日のうちに何度も行き来することになります。
脳が疲れていると、どうなるのでしょうか?
季節の切り替えは、脳にとって大きな仕事です。
このシリーズでお話ししてきたように、脳は自律神経にブレーキをかけて調整しています。考える脳(前頭前野:ぜんとうぜんや。おでこの奥にある、考えたり気持ちを抑えたりする場所)は、ストレスにとても敏感です。研究でも、軽いストレスで働きが落ちやすいことが報告されています。
働きが落ちると、ブレーキがゆるみ、体は緊張する側(交感神経)へ傾きやすくなると考えられています。
そこへ季節の切り替えが重なると、自動調節のずれが出やすくなります。私は、季節の変わり目のたびに体のあちこちに不調が出るのは、この「調整の余裕のなさ」が表れたものだと考えています。
暑い時期の疲れが、なぜ秋まで残るのでしょうか?
夏のあいだに、眠りが浅くなっていることが一因と考えられています。
暑いと、眠りはどうなるのでしょうか?
研究では、暑さや寒さで夜中に目が覚めやすくなり、深い眠りが減ることが報告されています。湿度の高い暑さは、眠りにとってさらに負担になります。
厚生労働省の睡眠ガイドでも、夏は寝つきにくく、眠りが続きにくい時期とされています。高温で湿度の高い寝室も、その一因に挙げられています。
深い眠りの間は、自律神経が緊張する側から休む側へ移ることが報告されています。眠りが浅くなると、この休む側の時間が短くなります。体を休める時間そのものが、夏は削られやすいと考えられます。
回復が追いつかないと、どうなるのでしょうか?
暑さは、毎日体にかかる負担です。
ストレスへの反応は、短い間なら体を守ってくれます。ところが、何度も繰り返したり、ストレスが終わっても反応が止まらなかったりすることがあります。そうすると、体に負担がたまっていくと考えられています。
夏の体は、この状態になりやすくなります。昼は暑さの負担がかかり、夜は眠りが浅く、回復が追いつきにくくなります。
その負担を抱えたまま、秋の切り替えが始まります。夏の終わりにどっと疲れが出るのは、そのためだと考えられます。夏のあいだにたまった負担が、季節の切り替えをきっかけに表に出てくることがあります。一般に「夏バテ」と呼ばれる状態です。
体が弱いからでも、気持ちがたるんでいるからでもありません。
当院が、自律神経そのものではなく、自律神経を調整している脳に働きかけることを大切にしているのは、そのためです。
こんなときは、医療機関を受診してください
季節の変わり目の不調だと思っていても、ほかの病気が隠れていることがあります。まずは医療機関で検査を受けてください。
症状によっては、医師の診察が必要な場合があります。当院でも施術の前に、医療機関への受診が必要な状態でないかを確認しています。
暑い時期は、次のことにも気をつけてください。
めまい、吐き気、頭痛、だるさがあり、さらに次のような様子があるときは、熱中症のおそれがあります。
- 水分がとれない
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がはっきりしない
- 汗が止まらない、または汗が出ない
このようなときは、ためらわずに救急車を呼ぶなど、すぐに医療機関にかかってください。
今日からできることはありますか?

寝室の温度と湿度を、寝る前に整えておいてください。
夏は、眠りが浅くなりやすい季節です。研究でも、暑さや湿気で目が覚めやすくなることが報告されています。厚生労働省の睡眠ガイドでも、寝室を暑すぎず寒すぎない温度にすることが勧められています。
やり方はかんたんです。
- 寝る前、歯みがきに行く前に、寝室のエアコンか除湿を入れておく
- 布団に入ったら、暑すぎず寒すぎないかを肌で確かめる
- 汗ばむようなら少し下げ、肩や足が冷えるようなら少し上げる
これを毎晩1回、寝る前の習慣にしてみてください。
タイマーで切れたあと、暑さで目が覚めることがあります。その場合は、切らずに弱めの設定で朝まで続けるのも一つの方法です。冷えが気になる方は、エアコンを切る代わりに、薄手の掛け物など寝具で調整してみてください。
ちょうどよい温度は、人や部屋によって違います。エアコンのたとえに出てきた27度は、あくまでたとえの数字です。ご自分が「暑くも寒くもない」と感じるところを、目安にしてみてください。
秋から冬にかけては、寒さで目が覚めることもあります。そのときは、暖房や寝具で、寒すぎない状態をつくってみてください。
まとめ
- 体温を一定に保っているのは、脳の自動調節です
- 寒いときは血管を締め、暑いときは汗と皮膚の血流で熱を逃がしています
- 季節の変わり目は、その調整の向きを大きく切り替える時期です
- 暑さに慣れるには、暑さに当たる強さ・時間・回数が要ります
- 夏は眠りが浅くなりやすいので、寝室の温度と湿度を寝る前に整えてみてください
このシリーズでは、自律神経の不調を12の質問から見てきました。気分も、イライラも、眠りも、季節の不調も、自律神経を調整している脳のブレーキという同じ根っこにつながっています。季節の変わり目の体調不良が続くときは、お気軽にご相談ください。
最後までブログをお読みいただき、ありがとうございました。皆様の健康と、笑顔あふれる毎日を心よりお祈りしております。
(監修:柔道整復師・はり師・きゅう師 作尾大介)
この記事を書いた人

作尾 大介(さくお だいすけ)
- 資格:柔道整復師・はり師・きゅう師(いずれも国家資格)
- 施術歴:2005年より20年以上
- 得意分野:頭痛、肩こり、腰痛、坐骨神経痛、五十肩など、長引く慢性的な痛みと体の不調
- 所属院:こころ鍼灸整骨院(兵庫県小野市中町278-3 ひかりハイツ101)
参考文献・引用元
- Morrison SF, Nakamura K. Central mechanisms for thermoregulation. Annu Rev Physiol 2019;81:285-308.
- Périard JD, Racinais S, Sawka MN. Adaptations and mechanisms of human heat acclimation: Applications for competitive athletes and sports. Scand J Med Sci Sports 2015;25 Suppl 1:20-38.
- Arnsten AFT. Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nat Rev Neurosci 2009;10(6):410-422.
- Okamoto-Mizuno K, Mizuno K. Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. J Physiol Anthropol 2012;31:14.
- Trinder J, Kleiman J, Carrington M, et al. Autonomic activity during human sleep as a function of time and sleep stage. J Sleep Res 2001;10(4):253-264.
- McEwen BS. Protective and damaging effects of stress mediators. N Engl J Med 1998;338(3):171-179.
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」. https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf






コメント