
「ぎっくり腰になってしまったのですが、冷やした方がいいですか?」
「朝起きたら首が回らなくて。湿布は温感と冷感、どちらを貼ればいいでしょうか」
「とりあえず氷で冷やしてみたんですけど、余計に痛くなった気がして」
こういったご質問を、患者さまから本当によくいただきます。
痛みが出た直後は、ゆっくり調べている時間もありません。動くのもやっと、という状態でスマホを見ている方も多いのではと感じています。家事もお仕事も待ってくれない中で、それでも動かなければならない。そのつらさは、よくお聞きしています。
こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています院長の作尾大介です。
今日は、ぎっくり腰や寝違えのときに私がおすすめしている判断のしかたを、そのままお話ししていきます。
この記事の要約
このブログでは、ぎっくり腰や寝違えのときに温めるか冷やすかをご紹介しています。
結論は、次のとおりです。
- ぎっくり腰や寝違えは、冷やすより温めることをおすすめしています
- いちばん手軽な方法は、お風呂の湯船にゆっくりつかること
- 触って明らかに熱を持っているときだけ、1回まで冷やしてよい
- 温めたあとは、痛くない範囲で少し動くこと
この記事を読むと得られること
- ぎっくり腰・寝違えを温めた方がよい理由がわかる
- 体の中で何が起きているのかがわかる
- 温め方の具体的な手順と、避けたいことがわかる
- 医療機関にすぐ相談した方がよい状態がわかる
それでは、一緒に見ていきましょう。
ぎっくり腰や寝違えは温める?冷やす?結論はどちら?
先に結論をお伝えします。
ぎっくり腰や寝違えのとき、私は温めることをおすすめしています。
冷やすよりも、お風呂にゆっくりつかっていただいた方が、早く楽になる傾向があります。
判断のものさしは、次の2つです。
- ぶつけた、ひねった、転んだ、という心当たりがあるか
- 痛いところを手で触って、熱く感じるか
ぎっくり腰も寝違えも、この2つに当てはまらないことがほとんどです。だから温める。とてもシンプルな話です。
表にすると、こうなります。
| こんなとき | どうする |
|---|---|
| 朝起きたら首が回らない(寝違え) | 温める |
| 荷物を持った瞬間に腰が抜けた(ぎっくり腰) | 温める |
| 心当たりがないのに、じわじわ痛む | 温める |
| 転んで膝を打った/足首をひねった | 冷やす |
| 触ると熱を持っていて、ズキズキうずく | 冷やす |
💡 ぶつけた・ひねったケガのアイシングについてはこちらに詳しく書いています。
お子さんが転んだときの手当てや、冷やす時間の目安、保冷剤ではなく氷を使う理由まで詳しくお話ししています。
ぎっくり腰や寝違えは「ケガ」ではないの?
ぎっくり腰について、日本整形外科学会のホームページにはこう書かれています。
「急に起こった強い腰の痛みを指す一般的に用いられている名称(通称)で、病名や診断名ではありません」。
参考文献:
- 日本整形外科学会「ぎっくり腰」症状・病気をしらべる
つまりぎっくり腰は、ぶつけた・転んだといった、はっきりしたきっかけがあるわけではありません。 寝違えも同じです。朝起きたら首が回らない。それだけです。
アイシングは、ぶつけた・こけた、そんなときにこそ役に立ちます。ぎっくり腰や寝違えは、そこから外れています。
痛みの原因も、ひとつではありません。筋肉の疲れ、関節の動きの悪さ、睡眠不足、冷え、心配ごと。いろいろなものが重なって、ある日ぽろっと出てきます。だからこそ、冷やして炎症を抑えるという発想だけでは、うまくいかないことが多いのです。
体が守りに入ると、なぜ痛みが強くなるの?

ここからは、私自身がどう考えているかをお話しします。
筋肉の中には、「今どれくらい伸ばされているか」を測るセンサーが入っています。筋紡錘(きんぼうすい)といいます。
このセンサーには感度のつまみがついています。そのつまみを回しているのが、脳から降りてくる細い神経です。ガンマ運動ニューロンといいます。
強い痛みが出たとき。びっくりしたとき。「また痛くなったらどうしよう」と不安になったとき。脳は「危ない」と判断して、このつまみを上げます。
感度の上がったセンサーは、ほんの少し動いただけでも「伸びすぎだ、危ない」と反応します。そして筋肉をぎゅっと縮めます。
例えるなら、防犯ブザーの感度を上げすぎた状態です。風でカーテンが揺れただけで鳴り出してしまいます。ぎっくり腰の直後、寝返りを打とうとしただけで悲鳴が出るのは、これに近いことが体の中で起きているのだと私は考えています。
そして、縮みっぱなしになった筋肉は、それ自体が新しい痛みのもとになります。血の巡りも悪くなります。痛いから守る、守るからもっと痛い。この輪をどこかで切ってあげたい。
冷やすと、なぜ守りが強くなるの?
では、そこに冷たいものを当てるとどうなるでしょうか。
冷たさは、体にとって心地よい感覚ではありません。不快な感覚が入ると、脳は「やっぱり危ない」と判断します。 守りがさらに強くなります。
反対に、温かさは心地よい感覚です。心地よい感覚が入ると、脳は「大丈夫そうだ」と判断しやすくなります。すると、上がっていたつまみが下がってきます。筋肉がゆるみ、血が巡ります。
これが、ぎっくり腰や寝違えを温めた方がよいと私が考えている理由です。
「冷やしてみたけれど、余計に痛くなった気がする」。そうおっしゃる患者さまが少なくないのも、ここに理由があると思っています。
※ この筋紡錘とガンマ運動ニューロンの説明は、私が日々の臨床で体の反応を見ながら考えてきた見解です。ぎっくり腰の患者さんでこの仕組みが直接証明されているわけではありません。医学的な診断や治療に代わるものではないことを、あわせてお伝えしておきます。
温めた方がいいという根拠はあるの?
私の考えだけでは心もとないと思いますので、研究で分かっていることもお伝えします。
腰痛に対して温めることと冷やすことを比べた研究をまとめた報告があります。9つの研究、合計1,117人分のデータが集められました。
そこで報告されているのは、次のことです。温めるタイプの湿布のようなもの(ヒートラップ)を使った方が、5日後の痛みが小さくなりました。
一方、冷やすことについては、質の低い研究が3つ見つかっただけでした。「腰痛に冷却を使うことについて、結論を出すことはできない」と結ばれています。
参考文献:
- French SD, Cameron M, Walker BF, Reggars JW, Esterman AJ. Superficial heat or cold for low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2006;(1):CD004750.
引用箇所: “heat wrap therapy significantly reduced pain after five days (weighted mean difference (WMD) 1.06, 95% confidence interval (CI) 0.68 to 1.45, scale range 0 to 5) compared to oral placebo”
日本語訳: ヒートラップ療法は、飲み薬のプラセボと比べて5日後の痛みを有意に軽くした。
引用箇所: “The evidence for the application of cold treatment to low-back pain is even more limited, with only three poor quality studies located. No conclusions can be drawn about the use of cold for low-back pain.”
日本語訳: 腰痛に冷却を用いることについての根拠はさらに限られており、質の低い研究が3件見つかっただけであった。腰痛に対する冷却の使用について、結論を導くことはできない。
もうひとつ、アメリカ内科学会が出している腰痛の診療ガイドラインがあります。そこでは急性の腰痛に対して、まず薬ではない方法を選ぶよう強く推奨されています。 挙げられているのは、体の表面を温めること、マッサージ、鍼、徒手療法です。
参考文献:
- Qaseem A, Wilt TJ, McLean RM, Forciea MA. Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Annals of Internal Medicine. 2017;166(7):514-530.
引用箇所: “clinicians and patients should select nonpharmacologic treatment with superficial heat (moderate-quality evidence), massage, acupuncture, or spinal manipulation (low-quality evidence). … (Grade: strong recommendation)”
日本語訳: 医療者と患者は、体の表面を温める方法(中等度の質の根拠)、マッサージ、鍼、徒手療法(低い質の根拠)といった、薬を使わない治療を選ぶべきである。(推奨の強さ:強い推奨)
ここでも正直にお伝えします。温めれば必ず治る、という話ではありません。
分かっているのは、「ぎっくり腰は氷で冷やすのが正解」と決まっているわけではない、ということです。そして、温めて痛みがやわらぎ、少しでも動けるようになるのなら、それを選ぶ理由は十分にある、ということです。
寝違えで触ると熱いときは、冷やしてもいい?
寝違えでも、痛いところを触って明らかに熱を持っていることがあります。
そのときは、冷やしていただいて構いません。
ただし、1回までにしておいてください。
繰り返し冷やすと、先ほどお話しした「体が守りに入る」流れを強めてしまうことがあります。1回冷やしてみて楽にならなければ、そこでやめて、温める方に切り替えていただくとよいと思います。
ぎっくり腰・寝違えを温めるときは、どうすればいい?

いちばんのおすすめは、お風呂です。
湯船にゆっくりつかってください。痛みが強くならない範囲で構いません。動かすのがつらいときは、湯船の縁につかまりながら、無理のない姿勢で。
お風呂に入るのが難しいときは、ホットパックや蒸しタオル、使い捨てカイロでも構いません。15分から20分を目安にしてください。カイロを使うときは、肌に直接当てないでください。低温やけどを防ぐためです。
そして、ここがひとつ大事なところです。
温めたあと、そのまま寝たきりにならないでください。
先ほどの研究でも、温めることに軽い運動を加えた方が、7日後の痛みと動きやすさがさらに良くなったと報告されています。痛くない範囲で、少し歩く。楽な方向に、そっと体を動かす。これだけで違ってきます。
もし温めてみて、ズキズキが強くなる、熱っぽく不快になる。そんなときは中止してください。体が「今は違う」と教えてくれています。
ぎっくり腰や寝違えで、すぐに医療機関へ行った方がいいのはどんなとき?
温めるか冷やすかを考える前に、まず病院で診ていただいた方がよい場合があります。
腰の痛みで、次のような様子があるとき。
- おしっこが出にくい、または漏れてしまう
- 便が出しにくい
- おしりのまわりの感覚がおかしい
- 両足がしびれる、足に力が入らない、だんだんひどくなる
- 熱がある
- じっとしていても痛い、夜中も痛みで目が覚める
- 転んだ・ぶつけたあとの強い痛み
首の痛みで、次のような様子があるとき。
- 手の細かい作業がしにくくなった
- 歩きにくくなった
- 激しい頭痛、めまい、ものが二重に見える、しゃべりにくい
これらに当てはまるときは、温める・冷やすの前に、整形外科や医療機関を受診してください。
よくあるご質問
Q. ぎっくり腰になった日に、お風呂に入っていいですか?
A. 入っていただいて構いません。むしろおすすめしています。ただし、のぼせるような長風呂は避けてください。浴室で動くときは、転ばないよう気をつけてお願いします。
Q. ぎっくり腰は、寝て安静にしていた方がいいですか?
A. 痛みが強い最初の1日か2日は、楽な姿勢で休んでいただいて構いません。ただし、何日も寝たきりで過ごすことはおすすめしていません。痛くない範囲で少しずつ動いていただいた方が、回復が進みやすくなります。
Q. 湿布は温感と冷感、どちらを貼ればいいですか?
A. ぎっくり腰や寝違えは温感を目安にしてください。ただし湿布の温感・冷感は、実際の皮膚の温度を大きく変えるものではありません。貼ってみて心地よい方を選んでいただくのがよいと思います。
Q. すでに冷やしてしまいました。悪化しますか?
A. ご安心ください。1回や2回冷やしたことで、そのまま悪くなるということはありません。今から温める方に切り替えていただければ大丈夫です。
Q. 温めても痛みが変わりません。どうすればいいですか?
A. 温めて変化がない、あるいは痛みが増すようでしたら、いったん中止してください。ぎっくり腰や寝違えは原因がひとつではありませんので、体の状態によって必要な手当ては変わります。そのときは、遠慮なくご相談いただければと思います。
Q. 何日くらいで良くなりますか?
A. 個人差が大きいところです。数日で楽になる方もいれば、2週間以上かかる方もいらっしゃいます。日を追うごとに少しずつ楽になっていくかどうかを目安にしてください。まったく変化がない、あるいは悪くなっていくときは、一度ご相談ください。
ぶつけた・ひねったケガのときは、どうすればいい?
ここまでは、ぶつけた心当たりのない痛みのお話でした。
一方で、転んで膝を打った、足首をひねった、スポーツでぶつかった。こういうときは判断が変わります。組織そのものが傷ついているので、冷やす方が理にかなっています。
💡 アイシングについてはこちらに詳しく書いています。
ご自宅でのアイシングの手順、何分冷やせばよいか、保冷剤ではなく氷を使う理由まで詳しくお話ししています。
ぎっくり腰・寝違えを、当院ではどう診ていく?

ぎっくり腰や寝違えでお越しいただいたとき、当院ではまず、痛みの出方とお体の反応をていねいに確かめます。
熱を持っているのか。どの動きで痛むのか。どこが守りに入っているのか。
そのうえで、今日のお体に合った手当てを選んでいきます。ご自宅での過ごし方や、温め方のコツも、その方の状態に合わせてお伝えしています。
「冷やすか温めるか」は、あくまで入り口です。痛みが繰り返すのであれば、そうなりやすい体の使い方や、疲れのたまり方があります。そこまで一緒に見ていけたらと思っています。
まとめ

ぎっくり腰と寝違えの手当てについて、まとめます。
- ぶつけた心当たりがないなら、冷やすより温める
- いちばん手軽なのはお風呂の湯船。難しければホットパックで15分から20分
- 触って明らかに熱いときだけ、1回まで冷やしてよい
- 温めたあとは、痛くない範囲で少し動く
- 温めて痛みが増すときは中止する
そして何より、痛いところに手を当ててみること。 熱いか、そうでないか。ご自身の手で確かめる。それがいちばん確かな目印になります。
痛みが長引くとき、繰り返すときは、どうぞお早めにご相談ください。早めにお越しいただくほど、回復までの道のりも短くなります。
最後までブログをお読みいただき、ありがとうございました。
皆さまが痛みや不調に悩まされることなく、笑顔で毎日を過ごせますよう、心よりお祈りしております。
こころ鍼灸整骨院
兵庫県小野市
WEB予約:https://kokoro-ono.com/webyoyaku
TEL:0794-73-8630
参考文献・出典
- French SD, Cameron M, Walker BF, Reggars JW, Esterman AJ. Superficial heat or cold for low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2006;(1):CD004750. https://www.cochrane.org/evidence/CD004750_superficial-heat-or-cold-low-back-pain
- Qaseem A, Wilt TJ, McLean RM, Forciea MA. Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Annals of Internal Medicine. 2017;166(7):514-530. https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M16-2367
- 日本整形外科学会「ぎっくり腰」症状・病気をしらべる https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/acute_low_back.html
※ 本記事のうち、筋紡錘とガンマ運動ニューロンによる説明、および冷たさ・温かさが体の警戒に与える影響についての記述。これらは当院での施術経験にもとづく院長の見解です。医学的な診断や治療に代わるものではありません。症状や効果の感じ方には個人差があります。気になる症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。
監修 柔道整復師 鍼灸師 作尾大介






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