冷えによる筋肉の硬さを和らげる転倒予防法


「最近、お父さんやお母さんがちょっとした段差でつまずくことが増えた気がする…」

「離れて暮らす親が、寒い時期に転んで怪我をしないか心配」

「手足が冷えて感覚が鈍くなっているみたいで、歩くのも不安定になってきた」

 

このような心配を抱えていらっしゃる方に、少しでもお役に立てる情報をお届けできればと思います。

 

冷えで高齢の親が転倒しないか心配な方へ|筋肉の硬さと手足の冷えを予防する3つの方法

こんにちは、兵庫県小野市でこころ鍼灸整骨院を開業しています、院長の作尾大介です。

先日、1月28日放送の朝の情報番組「DayDay.」(日本テレビ系)で、寒さによる筋肉の硬さが原因で転倒が増えているというニュースが取り上げられていました。

中には、転倒がきっかけで重大な怪我につながっているケースもあるとのことです。

このニュースを見て、私も同年代の親がいるので、すぐに両親のことが頭に浮かびました。

60代、70代の親御さんをお持ちの方は、同じように心配されたのではないでしょうか。

 

離れて暮らしていると、なおさら気になるものです。その気持ちは、とてもよくわかります。

今回は、子育て世代の方が離れて暮らす親御さんに伝えられる「冷えによる転倒を予防する3つの方法」と、もしも転倒してしまったときに早めに対処することの大切さについてお伝えします。

 

冷えで高齢者の転倒が増える3つの原因|筋肉と手足の感覚の関係

テレビのニュースを見て、「なぜ冬になると高齢者の転倒が増えるのだろう?」と気になったので、詳しく調べてみました。

寒さによって高齢者の転倒が増える背景には、大きく分けて3つの原因が関係しています。

1. 冷えで筋肉に力が入りすぎて、体がこわばってしまう

私たちの体には、活動するときに働く「交感神経」と、リラックスするときに働く「副交感神経」という2つの神経があります。

寒くなると、体は「体温を下げてはいけない」と判断して、交感神経の働きが活発になります。

すると筋肉がギュッと縮んで、体がこわばってしまいます。

 

寒い朝にグッと肩をすくめて歩いてしまうこと、ありますよね。あれがまさに、体に力が入りすぎている状態です。

 

研究によると、冬の交感神経の活動は夏と比べて約1.5倍も高くなることがわかっています。

特に高齢者は、若い方と比べて寒さに対する交感神経の反応が大きくなる傾向があります。

筋肉に力が入りすぎると、体をしなやかに動かすことが難しくなり、とっさの動きに対応できなくなってしまいます。

お父さんやお母さんが冬になると「体が硬い」「動きにくい」とおっしゃることがあれば、それはこの交感神経の影響かもしれません。

 

参考文献:

  • Cui J, et al. Muscle sympathetic nerve activity during cold stress and isometric exercise in healthy older adults. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2015;308(2):H152-H158.

引用箇所: “MSNA increased during cooling in older, but not young, adults (young: Δ0 ± 1 vs. older: Δ8 ± 1 bursts/min; P < 0.05)”
日本語訳: 冷却時の筋肉交感神経活動は、若年者では変化がなかったが、高齢者では有意に増加した

 

2. 冷えで血の巡りが悪くなり、筋肉が本来の動きをできなくなる

寒さで筋肉が硬くなると、筋肉の中を通っている血管も圧迫されて、血の巡りが悪くなります。

例えるなら、ホースを強く握ると水の流れが悪くなるのと同じです。

実は、筋肉は動くときだけでなく、筋肉が緩むときにもエネルギーが必要です。

そのエネルギーを届けているのが血液です。

血の巡りが悪くなると、筋肉に十分なエネルギーが届かず、本来の柔らかさやしなやかさを失ってしまいます。

その結果、立ち上がったり、とっさに踏ん張ったりする動きがしにくくなるのです。

 

高齢の方はもともと筋肉量が少しずつ減ってきているので、冷えによる血の巡りの悪さが加わると、転倒のリスクがさらに高まってしまいます。

 

参考文献:

  • Wakabayashi H, et al. Cold exposure and musculoskeletal conditions; A scoping review. J Therm Biol. 2022;109:103316.

引用箇所: “Cold temperature caused decreased muscle power and contraction velocity, increased stiffness of tendons, as well as decreased nerve conductivity.”
日本語訳: 低温環境は筋力と収縮速度の低下、腱の硬さの増加、さらに神経伝導速度の低下を引き起こした

 

3. 冷えで手足の感覚が鈍くなり、小さな段差に気付けなくなる

3つ目は、冷えによって手足の感覚が鈍くなることです。

氷で手を冷やし続けると、だんだん感覚がなくなった経験はないでしょうか。

この痛みの感覚は「痛覚(つうかく)」と呼ばれます。

痛覚があるおかげで、裸足で石を踏んだときに「痛い」と感じ、体を正確に使うことができています。

ところが、冷えで足の感覚が鈍くなると、小さな段差に気付けなかったり、ぬかるんだ地面に足を乗せてしまったりして、転倒につながりやすくなります。

厚生労働省の調査によると、65歳以上の方の転倒による死亡者数は年間9,509人にのぼり、交通事故による死亡者数(2,150人)の4倍以上です。

冬場は特に転倒事故が多く、1月は他の月と比較して労働災害の発生件数が大幅に増えるとの報告もあります。

 

参考文献:

  • Ferlinc A, et al. The Importance and Role of Proprioception in the Elderly: a Short Review. Maturitas. 2019;127:54-57.

  • 引用箇所: “With the loss of proprioception during aging, the biomechanics of joints and the neuromuscular control of the limbs may change, resulting in impaired balance and a higher possibility of falls.”
    日本語訳: 加齢に伴う固有受容感覚の低下により、関節のバイオメカニクスや四肢の神経筋制御が変化し、バランスの低下と転倒リスクの増加につながる

この数字を見ると、心配になるのも当然です。

私も同年代の親がいるので、この統計を知ったときには、すぐに電話をして「気をつけてね」と伝えたくなりました。

 

高齢の親御さんに伝えたい|冷えによる転倒を予防する3つの方法

では、離れて暮らす親御さんに、どんな対策を伝えてあげると良いのでしょうか。

ポイントは体を温めること血の巡りを促すこと、そして体のエネルギーの源である酸素をたくさん取り込むことです。

次にお電話されるときや、帰省されたときに、ぜひ伝えてあげてください。

 

方法1. 深呼吸で筋肉の緊張をゆるめる|高齢者でも簡単にできる転倒予防

背中が丸くなったり、前かがみの姿勢が続くと、足が上がりにくくなり、段差につまずきやすくなります。

また、前かがみの姿勢では呼吸が浅くなります。

私たちの体は、息を吸うたびにお腹や背中、胸がふくらみ、息を吐くたびにしぼむ仕組みになっています。

ところが、背中が丸まると、この呼吸の動きが妨げられてしまうのです。

 

呼吸が浅くなると、体に取り込む酸素の量が減り、体を動かすために必要なエネルギーを十分に作れなくなります。

すると体はエネルギーを節約しようとして、内臓や脳の働きを優先し、筋肉への供給が後回しになることがあります。

そこで大切なのが深呼吸です。

 

親御さんに伝えていただきたいやり方:

  • 鼻からゆっくり息を吸います
  • 口からさらにゆっくり息を吐きます
  • 吸う:吐く=1:2の割合を意識します(例:2秒吸って4秒吐く)
  • 30分に1回を目安に

「テレビのCMの間に深呼吸をする」と伝えると、取り入れやすいかもしれません。

この深呼吸を続けることで、交感神経の高ぶりが落ち着き、筋肉の緊張が和らぎやすくなります。

 

方法2. お風呂とストレッチで筋肉の硬さを予防する

筋肉が硬くなると、立ち上がる動作やとっさに踏ん張る動作がしにくくなります。

そこでおすすめなのが、お風呂にゆっくりつかることと、お風呂上がりの簡単なストレッチです。

転倒を予防するためには、ふくらはぎ太ももの裏を伸ばすストレッチが大切です。

 

親御さんに伝えていただきたいポイント:

  • ゆっくり呼吸をしながら、心地よい程度に伸ばす
  • 1つのストレッチに対して、理想は60秒〜90秒ほど
  • 忙しければ30秒間でも大丈夫
  • 椅子に座ったままでもできるストレッチがおすすめ

帰省されたときに、一緒にストレッチをしてあげるのも良いかもしれません。

「一緒にやろう」と声をかけると、親御さんも取り組みやすくなります。

お風呂で体を温めた後にストレッチをすると、筋肉が伸びやすくなり、より効果的です。

 

方法3. カイロで手足に血の巡りを届ける|高齢者の冷え対策

体を温めることで、筋肉や手足の感覚を司るセンサーにしっかり血液を届けることができます。

体を温める方法として、カイロを使うことをおすすめしています。

熱は血液によって体の隅々に届けられますので、血管がたくさん通っているところを狙って温めると効率的です。

 

親御さんに伝えていただきたいカイロの貼り方(服の上から):

① 太ももの裏(膝裏の少し上あたり)

膝の裏そのものに貼ると曲げ伸ばしの制限が出るので、膝裏より5センチほど上の部分がおすすめです。足への血流を温めることができます。

② 骨盤のお尻の少し上あたり

足の筋肉や足の裏に血液を届けている血管を効率よく温めることができます。

③ 首の付け根から背中の上あたり

全身に血流を巡らせやすくなります。肩こりや頭痛が気になる親御さんにもおすすめです。

「カイロを3ヵ所に貼るだけ」と伝えれば、親御さんも取り入れやすいのではないでしょうか。

 

高齢の親御さんが冷えで転倒してしまったら|早めの受診が怪我の悪化を防ぐ

予防をしていても、転倒が起きてしまうことはあります。

もしも親御さんが転倒してしまった場合、できるだけ早く専門家に相談されることをおすすめします

高齢者の場合、転倒の衝撃は若い方と比べて体への影響が大きくなりやすいです。

「大したことないから大丈夫」と親御さんがおっしゃっても、実は骨や筋肉に大きな負担がかかっていることがあります。

特に注意していただきたいのは、以下のような場合です。

 

  • 転倒後に腫れや痛みが続いている
  • 歩き方がいつもと違う、足を引きずっている
  • 転んだ後から手足の冷えがひどくなった
  • 転倒の回数が以前より増えている

このような場合は、できるだけ早く専門家に診てもらうことで、怪我の悪化を防ぐことができます。

「ちょっとつまずいただけだから」と放置してしまうと、体をかばう動きが癖になり、別の場所に痛みが出てくることもあります。

お電話で親御さんの様子を聞いて、少しでも気になることがあれば、「一度診てもらったら?」と声をかけてあげてください。

その一言が、大きな怪我を防ぐきっかけになることがあります。

 

冷えによる転倒を予防して高齢者の怪我を防ぐ|1ヶ月の継続がポイント

今回ご紹介した3つの方法を、まずは1ヶ月ほど継続していただけるよう、親御さんに伝えてみてください。

冷えによる手足の感覚の低下を和らげて転倒を予防することはもちろん、冷えによる節々の痛みや腰痛、頭痛といった不調の予防にもつながります。

「1ヶ月やってみて」と伝えるだけでなく、時々お電話で「深呼吸してる?」「カイロ貼ってる?」と声をかけてあげると、親御さんも続けやすくなります。

それでも改善が感じられないときや、転倒が心配なときには、お気軽に当院までご相談ください。


冷え症でお悩みだった50代女性の患者さんの声

当院では、冷えによる不調でお悩みの患者さんの施術も行っています。

体のメンテナンスで通院されている50代女性のM・Fさんは、頭痛や肩の痛み、冷え症にお悩みでした。

 

Q. 何が決め手で当院を受診されましたか?

「知人の紹介。整体に行ってみたいと思っていた時にタイミングよく話を聞いた。」

Q. どのようなお悩みで当院を受診されましたか?

「頭痛・肩痛・腕があがりにくく着がえ等に苦労していた。冷え症。」

Q. 実際に受診されて良かったことは?

「整体治療のイメージ(ポキッ、バリッ、痛い)というのがくつがえされました。自分が気づいていない体の悪いところや、また心のつらいところにも手が届いているような気がします。話し方や人に接する態度など、医療人として学べるところもあります。この整体を紹介してもらって本当に良かったと感謝しています。」

お名前 M.Fさん 52歳女性

住所  小野市

職業  看護師

 

M・Fさんのように、冷え症でお悩みの方の体の調子を整えるお手伝いをしています。

親御さんの冷えや体の不調が気になる方も、お気軽にご相談ください。

 


冷えによる高齢者の転倒が心配な方へ|手足の冷えと筋肉の硬さを予防するまとめ

今回は、朝の情報番組「DayDay.」で取り上げられていた「寒さによる筋肉の硬さと転倒の増加」をきっかけに、高齢の親御さんの転倒予防についてお伝えしました。

 

この記事のポイント:

  • 冷えで交感神経が高まり、高齢者は特に筋肉がこわばりやすい
  • 血の巡りが悪くなり、筋肉が本来の柔らかさを失う
  • 手足の感覚が鈍くなり、小さな段差でもつまずきやすくなる
  • 深呼吸で筋肉の緊張をゆるめる(30分に1回、テレビのCMの間に)
  • お風呂とストレッチで筋肉の硬さを予防する(ふくらはぎ・太もも裏)
  • カイロで手足に血の巡りを届ける(太もも裏・骨盤・首の付け根)
  • 転倒してしまったら早めの受診で怪我の悪化を防ぐ

親御さんのことが心配になる気持ちは、とても自然なことです。私も同年代の親がいますので、よくわかります。

今回ご紹介した3つの方法は、お電話で伝えるだけでも十分取り入れられる内容です。

ぜひ次のお電話のときに、「こんな方法があるらしいよ」と伝えてあげてください。

 

それでも心配が続くときや、親御さんが転倒してしまったときには、お気軽に当院までご相談ください。

一緒に対策を考えていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

皆様とご家族の健康と笑顔あふれる毎日を心よりお祈りしております。

 


個人差に関する注記:
※施術の効果には個人差があります。すべての方に同様の効果を保証するものではありません。


参考文献・出典:

  • Cui J, et al. Muscle sympathetic nerve activity during cold stress and isometric exercise in healthy older adults. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2015;308(2):H152-H158.
  • Wakabayashi H, et al. Cold exposure and musculoskeletal conditions; A scoping review. J Therm Biol. 2022;109:103316.
  • Ferlinc A, et al. The Importance and Role of Proprioception in the Elderly: a Short Review. Maturitas. 2019;127:54-57.
  • 厚生労働省「人口動態調査」(2021年)
  • 厚生労働省「STOP!転倒災害プロジェクト」冬季における転倒防止対策

監修 柔道整復師 鍼灸師 作尾大介


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